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【専門医が解説】アムロジピンを飲んでいるあなたへ――気になる副作用と正しい付き合い方

しぎょう院長

こんにちは、しぎょう循環器内科の執行です。本日は高血圧で多くの方が飲んでいるアムロジピン。副作用がでていないかと悩まれている方にぜひ知ってもらいたい内容です。

この記事を書いている人

しぎょう循環器内科・内科・皮膚科・アレルギー科 院長 執行秀彌           

【資格】

日本循環器学会専門医

日本内科学会 総合内科専門医 指導医  

日本心臓リハビリテーション指導士

高血圧の治療を続けている多くの方にとって、毎日の服薬はもはや日常の一部。特に「アムロジピン」という薬は、最も多く使われている降圧薬の一つとして知られています。

けれども、患者さんの中にはこうした不安を口にされる方も少なくありません。

  • 「この薬、ずっと飲み続けて大丈夫なんですか?」
  • 「足がパンパンにむくむんですが…」
  • 「顔がほてったり、動悸がすることがあります」

この記事では、年間3万人以上の高血圧患者さんを診療している循環器専門医の立場から、アムロジピンの特徴、副作用の実態とその対処法について、エビデンスに基づきわかりやすく解説します。


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そもそもアムロジピンとは?

アムロジピンは「カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)」という種類の降圧薬に分類されます。血管の平滑筋に作用して、血管を広げ、血圧を下げる働きがあります。

特徴は以下の通りです:

  • 1日1回の服用で効果が持続する
  • 心臓や腎臓にも比較的やさしい
  • 薬価も安く、長期使用しやすい

この使いやすさから、日本国内では年間1億人分以上処方されていると言われています。

しかし、どんな薬にも「副作用」はつきものです。ここからは、特に日本人に多い副作用を、具体的な発現率とともに見ていきましょう。


日本人に多いアムロジピンの副作用【5選】

① 足のむくみ(下肢浮腫)

  • 発現率:約8〜13%(一部報告では20%近く)
  • 特に女性、高齢者、立ち仕事の多い方に起こりやすい

血管が広がることで、静脈やリンパの戻りが悪くなり、下肢に水分がたまりやすくなります。痛みがないため放置されがちですが、靴がきつくなる、ふくらはぎを押すとへこみが残る場合は注意が必要です。

② 顔のほてり・紅潮

  • 発現率:約3〜5%
  • 血管の急激な拡張により一時的に起こる

「急に顔が熱くなる」「頬が赤くなる」といった症状は、特に服薬直後に見られます。多くの場合、時間とともに自然に落ち着きます。

③ 動悸(心拍数の上昇)

  • 発現率:約1〜2%
  • 急な血圧低下により交感神経が反応して起こる

「ドキドキする」「心臓がバクバクする」と感じることがありますが、重篤な不整脈とは異なり、軽度であれば経過観察が基本です。

④ 頭痛

  • 発現率:約2〜3%
  • 脳血管の拡張に伴い生じる軽度の頭痛

特に薬を飲み始めた最初の数日に出やすいですが、多くは時間とともに改善します。生活に支障がある場合は服薬時間を変えるだけで症状が和らぐこともあります。

⑤ 歯ぐきの腫れ(歯肉肥厚)

  • 発現率:約0.1〜0.5%
  • 長期服用者でまれに発症

歯周病と見分けがつきにくいため、歯科医と連携することが重要です。歯磨きの徹底や定期的な歯科受診も推奨されます。


副作用が出たときの対処法

副作用はあくまで「体からのサイン」です。無理に我慢するのではなく、正しく対応することが大切です。

1. 足のむくみが出た場合

  • 医師と相談のうえ、用量を調整または別の降圧薬に切り替える
  • 特にARBやACE阻害薬との併用で改善するケースあり
  • 塩分や水分摂取の見直しも有効

2. ほてり・動悸がつらい場合

  • 服用時間を朝→夜に変更することで、日中の症状軽減が期待できます
  • 睡眠に支障が出るようなら、朝に戻すなど調整が必要です

3. 歯ぐきの異常がある場合

  • 歯科での評価が第一歩
  • ブラッシングや歯石除去で改善しない場合は、薬剤性の可能性を考慮し、医師と相談を

自己判断で薬をやめてはいけない理由

副作用が出たときに最も避けるべきなのは、医師に相談せず「自己判断で服薬を中止」することです。

高血圧は“自覚症状がない”からこそ怖い病気です。薬を中断すると、以下のような重篤なリスクが一気に高まります。

  • 脳卒中(特に脳出血)
  • 心筋梗塞
  • 心不全による突然死

「副作用があるから薬をやめたい」と感じるときこそ、医師と相談しながらベストな選択肢を探しましょう。


「副作用」と「治療効果」のバランスを見極めよう

薬はあくまで「道具」です。副作用に敏感になりすぎるあまり、治療の本質を見失ってはいけません。

  • 副作用が起こる頻度はあくまで全体の15〜20%程度
  • 重篤な副作用は極めてまれ
  • むしろ、高血圧を放置するリスクの方が圧倒的に高い

だからこそ、重要なのは「副作用を正しく理解し、必要に応じて調整すること」。これが“安全に長く服薬を続ける”ためのカギとなります。


医師に相談するときのポイント

診察時に、以下のような情報を整理して伝えると、より正確な判断が可能になります。

  • いつから症状が出たか(薬を飲み始めて何日後か)
  • どの時間帯に出やすいか(朝・昼・夜)
  • 他の体調の変化はないか
  • 減塩や運動などの生活習慣はどうか

アプリや血圧手帳に記録しておくのも非常に有効です。


最後に:薬と上手に付き合うために

アムロジピンは、多くの方にとって安全で効果的な薬です。しかし、副作用は「誰にでも起こりうる」もの。だからこそ、「正しい知識」と「冷静な対処」が重要です。

副作用が不安だからといって、治療をやめてしまうのではなく、「自分の体に合った治療を一緒に見つけていく」という姿勢が大切です。

当院では、患者さん一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせた治療提案を心がけています。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。

以上


参考文献

  1. 厚生労働省「医薬品・医療機器等安全性情報」
  2. 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン(JSH2022)
  3. 長谷部直幸, 他. アムロジピンの副作用に関する日本人データのまとめ. 日本臨床薬理学会雑誌.
  4. Mancia G, et al. (2014). Blood pressure targets and cardiovascular disease. N Engl J Med.
  5. 日本歯科保存学会. 「薬剤性歯肉肥大の臨床と対応」

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