当院における新型コロナウイルス感染症への対策につきまして

家族が糖尿病と診断されて心配です ― 家族が一緒に取り組む生活改善サポート

この記事を書いている人
MENU

突然の診断、家族としてどう受け止めれば?

「夫が糖尿病と診断されました。これからどう接すればいいのか分かりません」
「母が薬を飲み始めましたが、本人はあまり深刻に受け止めていないようで不安です」

こうしたご相談を日々いただきます。
糖尿病と診断されるのは患者さん本人ですが、実はその周囲にいるご家族も、患者さんと同じように大きな戸惑いや不安を抱えているものです。

私はこれまで数千人の糖尿病患者さんと、そのご家族に向き合ってきましたきましたが、治療がうまくいくかどうかの大きなカギは、実は「家庭環境」にあります。
だからこそ、ご家族の関わり方はとても大切で、治療の大きな力になるのです。

家族が抱える不安と、よくある誤解

糖尿病に対して、ご家族が感じる不安には、次のようなものがあります

「このまま進行すると、合併症が出てしまうのでは…」

「何を食べさせればいいのか分からない」

「治療に協力したいけれど、どこまで踏み込んでいいのか迷う」

「本人にやる気がないように見えて、どう声をかけたらいいか分からない」

さらに、次のような誤解を持っている方も少なくありません:

「糖尿病になったのは甘いものを食べすぎたせい」

「糖尿病は治らない病気で、手遅れなのでは」

「薬を飲んでいるなら、それで安心」

糖尿病は「不摂生の結果」という誤解が根強くありますが、決してそうでは無く体質や遺伝、年齢やストレス、環境因子など、さまざまな要因が複雑に絡む病気なのです。
ですから、ご本人を責めるのではなく、一緒に乗り越えるパートナーとして関わることが何より大切です。

ご家族ができる5つのサポート

1. 食卓を共有し、自然に「健康的な食事」へ

糖尿病の治療の基本は、まず食事の見直しです。
でも「あなたは糖尿病なんだから、これを食べなさい」という言い方は、本人のモチベーションを下げてしまうことがあります。

代わりに、家族全員で“健康的な食事”を心がけることが、自然な支えになります。

  • ごはんの量を調整する
  • 野菜中心のメニューにする
  • 外食やテイクアウトを減らす
  • 揚げ物や甘い物を「たまに」にする

ご本人の負担感を減らすためにも、「一緒に気をつけようね」と言える関係づくりが理想です。

2. 生活リズムを整えるサポート

睡眠不足や不規則な生活も、血糖値に悪影響を与えます。

  • 食事時間をなるべく一定に
  • 寝る前のスマホを控える
  • 夜遅い食事や間食を減らす

こうした生活リズムを家族で一緒に見直すことが、本人にとって大きな支えになります。

3. 運動を“楽しく”続けられる環境をつくる

運動療法は非常に効果的ですが、「1人ではなかなか続かない」のが現実です。

  • 一緒に散歩する
  • テレビを見ながらストレッチする
  • 買い物ついでに少し遠回りする

こうした日常の中の“ちょっとした運動”(別名:ちょこまか運動)でも、家族が一緒に取り組むことで継続しやすくなります

4. 数値に一喜一憂しない、あたたかい声かけ

血糖値やHbA1cの結果に一喜一憂しすぎると、本人もプレッシャーを感じてしまいます。

  • 「少しずつよくなってるね」
  • 「今回はうまくいかなかったけど、また頑張ろう」

こうした前向きな言葉がけが、継続の力になります

ご本人が落ち込んでいるときは、「一緒にやっていこう」と寄り添ってあげることが、何よりの薬です。

5. 医療者との橋渡し役になる

ご本人が医師に言いにくいこと(実は間食が多い、運動していないなど)を、家族がさりげなく伝えてくれることで、検査結果の評価や治療方針検討がスムーズなります。

また、診察に同席することで、医師からの説明を一緒に聞き、本人の理解をサポートすることもできます。

専門医として感じる、家族の力の大きさ

私がこれまで診てきた中で、ご家族の支えがある方ほど、血糖コントロールが良好に保たれている傾向をはっきりと認めます。

例えば、ある70代の男性は、奥様が毎日夕食に「野菜多め、糖質控えめのメニュー」を用意してくださり、さらに一緒にウォーキングにも取り組まれていました。
結果、HbA1cが9%から半年で6%台に改善。ご本人も「妻がいたから頑張れた」とおっしゃっていました。

ご家族の関わり方は、「医療では補えないとても大きな力」なのです。

最後に ― ご家族自身のケアも忘れずに

ご家族が一生懸命支えようとすればするほど、ご自身のストレスや疲れを抱えてしまうこともあります

  • 完璧を目指さなくていい
  • 無理せず、できる範囲で関わる
  • 疲れたときは、誰かに相談する

糖尿病は「長く付き合う病気」です。
だからこそ、ご家族もご本人と同じように、“無理なく、前向きに続けられる方法”を選んでください

私たち医療者は、ご本人だけでなく、そのご家族も支えたいと思っています。
「相談してみようかな」と感じたら、ぜひ一度お話を聞かせてください。

以上

引用文献

日本糖尿病学会. 糖尿病治療ガイド2024. 南江堂.

厚生労働省. 「糖尿病と家族の支援」e-ヘルスネット. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

American Diabetes Association. Standards of Medical Care in Diabetes—2024.

Trento M, et al. Diabetes care in the family context: a review. Diabetes Therapy. 2020.

  • URLをコピーしました!
MENU