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健康診断で指摘された期外収縮、ひょっとして私の心臓は問題あり?原因・症状・治療法を専門医がわかりやすく説明

しぎょう院長

こんにちは!しぎょう循環器内科皮膚科の執行です。期外収縮と言われているけど症状に悩まれたりこのままほっていていいか迷っていませんか?

「急にドキドキして不安」

「健康診断で期外収縮って書かれていた」

「このままほおっていても大丈夫なのか?」

不整脈の中でもよく見られる病気の期外収縮。健診で良く指摘されるけど心室性期外収縮とか上室性期外収縮としか書かれておらず心臓の事となると、不安になりますよね。

期外収縮は大丈夫と書かれていることがネットでは多いけど、ざっくりとしか書いてなくて何が正しいのかわからない…

そんなあなたが少しでも正しい情報を得て安心できるように循環器専門医が詳しく説明します。

この記事を書いている人

しぎょう循環器内科・内科・皮膚科・アレルギー科 院長 執行秀彌           

【資格】

日本循環器学会専門医

日本内科学会 総合内科専門医 指導医  

日本心臓リハビリテーション指導士

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期外収縮ってそもそもどんな病気?

期外収縮は本来の正常な脈(洞調律)と違った場所での電気信号が発生しそれに対して心筋が反応することで脈が速くなることが多い不整脈です。

異常電気信号の発生の場所が心室か心房によって2つの名称に分けられています。心房なら上室性期外収縮、心室なら心室性期外収縮といいます。

中学生の時に習ったと思いますが心臓は4つの部屋から出来ています。上の部屋を心房、下の部屋を心室といい左右に分けて右心房、右心室、左心房、左心室と分かれます。

本来の脈は右心房にある洞結節という部分から電気信号が1分間に60~100回程度発生しそれが心室と心房の間にある房室結節に伝わった後に左右の心室に伝わり心臓が収縮します。

しかし上室性期外収縮では洞結節ではなく左右の心房の違う場所で発生した電気信号がその後房室結節に伝わり心筋が収縮します。また心室性期外収縮では心室で電気信号が発生しそのまま心筋が反応します。

ともによく見られる不整脈で健常者でも9割以上の人に見られるものです。しかし全員がほおっておいてよい訳ではなく一部の人には治療が必要であったり慎重な経過観察が必要な場合があります。そこで今回は上室性期外収縮と心室性期外収縮でどのようなことに注意すれば良いのかをご説明していきたいと思います。

上室性期外収縮とは?

健康診断で一番ひっかかる不整脈のひとつ

健常者でも9割以上は上室性期外収縮(PAC)を認めるといわれており健診で指摘されたからすぐに問題があるというわけではありません。ですのでまず健診で言われて不安なあなた落ち着いてください。
さて、ではなぜ健診で指摘するかというと一部の人が問題が起こる可能性があるからです。
健常者の上室性期外収縮は1日に100拍以下と言われています。人間の平均的な脈拍数は1日10万拍です。割合で言うと0.1%とたいへん少ないです。
健診でとる心電図は1枚とるのに10秒、1日は約10万秒です。つまり心電図は1日の1万分の1を抜き出して来ているに過ぎません。0.1%しか起こらない事象を1万分の1で当てるというのはかなり希少な状態です。という事は健診で指摘されるということはもしかしたらあなたは上室性期外収縮の発生数が多いのかもしれません。

上室性期外収縮があると何が悪いの?

健康診断で上室性期外収縮が認められる方は認められない方と比較して死亡率が2~4割高いことが報告されています。その理由として全容は解明されていませんが、分かっている3つの理由についてご説明します。

心房細動の発生率が増加する

心房細動は脳梗塞を起こしたり心不全を起こしやすくする不整脈です。
心房細動になる可能性が上室性期外収縮がない患者さんと比較すると4倍以上になることが分かっています。心房細動については別記事で詳しく書いていますので参考にしていただきたいのですが、ひとまず死亡リスクを上げる一つの要因である事が分かっています。

脳卒中が増加する

上室性期外収縮を健診で指摘された方が指摘されていない方よりも2~6割脳卒中発生率が高いことが報告されています。心房細動に移行して脳卒中を起こしている症例も勿論含まれていますが原因が分からない脳卒中患者さんも含まれており上室性期外収縮を指摘された方は定期的なフォローアップが必要です。
フォローアップとは具体的に何をするのかについては後述します。

心臓血管死が増加する

上室性期外収縮は基本的に無症状で悪くない不整脈として説明されていますが、実は高血圧患者、心肥大患者、無症候性虚血性心疾患患者が多いことが分かっています。
ですので長年調査をすると上室性期外収縮を指摘された方は心血管死が多い事が分かっています。つまり無症状であっても心臓に関してはしっかりと一度調べておくことが大切という事になります。

上室性期外収縮は置いておいてよいのかしっかりと調べよう

上室性期外収縮は健常人で全く問題ない方でもカフェイン、アルコール摂取、ストレス増加、疲労などで増加することが分かっています。それらが過度にかかっている場合はまずは制限をしてみましょう。
しかし制限しても数の減らない場合や多数の上室性期外収縮を指摘される場合はリスクがあるかもしれません。例えば1日に1,000回以上認める患者さんの4割が将来心房細動に移行したという報告や10連発以上の上室性期外収縮を指摘された患者さんが有意に心房細動へ移行したという報告があり1日の個数をホルター心電図で調べる必要はあります。

また上室性期外収縮は心筋傷害によって起こっている可能性がたかく、心臓自体のサイズや動きのチェックを心臓超音波検査で行った方がよいでしょう。

心室性期外収縮とは?


心室性期外収縮(PVC)はほっておいて良いかどうかは受診して決まる

一般的にPVCは一般人の4%程度に報告されていて心疾患を有さない人のPVCは予後に関係がないとされています。しかしPVCの個数が多い方は心機能が低下したり心室細動などの致死性不整脈を誘発したりすることもあり本当に予後が良いグループであるのか確認が必要です。

それではどのようにその区別をつけていくのかをご説明していきたいと思います。

心室性期外収縮を調べるための方法

まず本稿は健康診断でPVCを指摘された方を対象に書いており基本的に無症状を前提としてお話をしていきます。
無症状であっても実は心臓に障害があったり、突然死を誘発する不整脈を起こしやすい遺伝子を持っている方がいます。遺伝子検査を気軽に行うことはできませんが、まずは遺伝子を持っていないかどうか疑うのにご家族の不整脈歴、特に突然死の家族歴をお伺いします。続いて心筋傷害について評価をしてきます。

心臓超音波検査などで心拡大がないか、心臓壁運動異常がないか、心臓内の圧力増加がないか弁膜症などがないかどうかを確認していきます。
もしこれらの検査で異常を疑う場合はカテーテル検査やMRI検査など大きな病院での精査が必要であり紹介が必要です。

異常がない場合は様子観察を出来る可能性が高まりますが1日のPVCの数が10,000発(一説によると5,000発という報告もあります)と約10%を超える場合やPVCの形が幅が広い(QRS幅150ms以上)時はその後の心機能低下の可能性が高まると報告されています。

治療は?

いままで見てきました2つの期外収縮ですが、治療はどのようにしていくのでしょうか。よく見る不整脈と聞いていたけどここまで読んでくださったあなたは治療をうけたいという気持ちが出てきたと思います。
しかし実は安易に治療を受けてはいけない方もいます。

治療はした方が良いのか?

上室性期外収縮

基本的には上室性期外収縮を消すための治療は行いません。というのもこれまで述べたように上室性期外収縮が起こった人は様々なリスクが増えますがそれほど多くのリスクを上昇させないというものと、不整脈を消すための抗不整脈薬を使用することで心臓への悪影響を起こしうることから治療のメリットとデメリットのバランスを考えたときに治療を行わないことが多いです。
基本的にはストレスやカフェイン、アルコール摂取の減量を行い、症状がどうしても強い場合はβ遮断薬を用いた治療を行い、必要時にその他の抗不整脈薬の使用やアブレーションを行うことが多いです。
つまり画一的に治療を決定する訳ではなくあなたの心臓の状態や症状によって治療法が変わってきますので主治医としっかりと相談することが大切です。

心室性期外収縮

心臓が傷んでいる方と傷んでない方で対応方法が変わります。全く心臓が傷んでいない方の心室性期外収縮は「特発性心室性期外収縮」といい基本的には予後悪化はないとされています。症状が強い場合は薬物治療あるいはアブレーション治療を検討します。

一方で心臓が傷んでいる方の場合はざっくり1日の不整脈数が10%を超える場合は治療を行うことで心機能低下を防げる可能性がある事が分かっています。そのため心室性期外収縮があるから直ぐ治療というよりは心機能や不整脈数を把握してから対応計画を練る必要があり、症状がないからとご自分で判断することなくしっかりと主治医と相談することが必要です。

治療法は?

薬物治療

元々は薬物療法しかありませんでした。しかし1990年代に心筋梗塞後の心室性期外収縮を薬物で減らしたところ寧ろ予後が悪化したという報告があり積極的に治療を行わないようになりました。(すべての抗不整脈薬がわるいのではないので底は注意が必要でIc群と言われる薬剤が問題でした)そのため現在はビソプロロールやカルベジロールなどのβ遮断薬やアミオダロンなどのⅢ群薬を用いコントロールすることが多いです。

カテーテル治療

一方で不整脈の原因箇所が特定できる場合はアブレーションといって心臓内に通電装置を持ち込み不整脈の原因となっている細胞を焼きます。すると不整脈が停止しその後薬剤を飲まなくてよい或いは飲む量を減らすことができます。
カテーテルは心臓内に物を入れるので絶対に安全とは言えませんが近年進歩が凄まじく多くの患者さんの予後やQOL改善に寄与しています。

予防法は?

基本的にはここまでお話してきた事をしっかりとしていただければ心配不要です。
心配不要というのはどういう事かと言うと不整脈の悪化原因が自律神経の関与が言われています。心配をすることがストレスになり不整脈の悪化につながります。
またカフェインやアルコールの過度の摂取、喫煙や寝不足や疲労蓄積なども不整脈悪化につながります。ですので何も検査せず心配いりませんとは言えませんが、しっかりと検査して方針が立っているのであれば無用な心配はせず規則正しい生活を行うことが予防になります。

まとめ

期外収縮には2種類ある。ともに大変多い不整脈で付き合っていける不整脈。
しかしその中に心臓の負担になりうるものが隠れているので無症状であっても一度は循環器専門医に相談をしよう。

治療を受ける受けないはあなたの症状と心臓で決まる。心臓の検査は超音波や心電図をはじめ総合的に判断が必要。

治療が必要な場合はカテーテル治療、薬物治療とあり一長一短だがカテーテルを必要以上に毛嫌いせずに行うことで予後改善やQOL改善が望まれる。

予防法はあまり心配し過ぎずに禁煙やカフェイン、ルコールの過剰摂取を避けしっかりと睡眠や休息をとることが大切。

以上

さて今回のお話はいかがでしたでしょうか。健康診断でひっかかると不安になる方も沢山いらっしゃると思います。この記事があなたにとって少しでも有益な情報となり、不安が減らせるのであれば幸いです。

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