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我慢できない手足の冷え、もしかして手足の動脈硬化かも?歩くと痛みやしびれを感じる事はありませんか?

しぎょう院長

こんにちは、しぎょう循環器内科皮膚科の執行です。

この度は動脈硬化疾患の中の末梢動脈疾患についてお話をしたいと思います。

手足が異様に冷えている、しびれや痛みを感じる。色々な原因があり、体質と諦めている方も多いのではないでしょうか?

治すことができる原因に末梢動脈疾患があり今回ご説明をしたいと思います。

この記事を読んでほしい人

  • 手足の冷えに悩んでいる
  • 歩くと足が痛くなる、あるいはしびれる
  • ふくらはぎがすぐに張る
  • 足がスースーする
  • 足の色が悪い
  • 血管年齢が実年齢より高い
この記事を書いている人

しぎょう循環器内科・内科・皮膚科・アレルギー科 院長 執行秀彌           

【資格】

日本循環器学会専門医

日本内科学会 総合内科専門医 指導医  

日本心臓リハビリテーション指導士

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末梢動脈疾患とは何ですか?

末梢動脈疾患とは、手足の末梢部分にある動脈の狭窄や閉塞で起こる疾患のことです。

主に以下のような特徴があります:

  • 動脈の狭窄や閉塞により、手足への血流が悪くなる
  • 特に下肢に症状が現れることが多い
  • 安静時痛、歩行時の痛み、しびれ、冷感など、さまざまな症状が出現する
  • 重症化すると壊死や潰瘍、さらには切断が必要になることもある

末梢動脈疾患は、動脈硬化が主な原因で発症しますが、場合によっては動脈硬化が起こっていない若年者でも起こります。そういった場合は血管が自分で縮こまってしまう病態(攣縮)が考えられ、若いから大丈夫とはいえません。しかし多くの方は長年にわたる高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病によって発症します。

この疾患は生活の質に大きな影響を与えるため、早期発見と適切な治療が重要です。先ほどいった症状がある場合は、ぜひ循環器専門医に相談するようにしてください。

ちなみに末梢動脈疾患が足に現れた場合はLEAD(Lower extremity artery disease)、腕に現れたものをUEAD(Upper extremity artery disease)と細かく分類していますが病気の本質としては大きく変わらないため今回は末梢動脈疾患(PAD Peripheral artery disease)といって説明していきます。

診断方法はどのように行うのか?

末梢動脈疾患(PAD)の診断においては、ABI検査が最初のステップとなります。

ABI検査はこのように手足の血圧を同時に測定し手足の血圧の比ととる簡便で非侵襲的な検査です。

ABIとはAnkle Brachial Indexの略語で元来は足の血圧の方が腕の血圧より高くなります。しかし血流不足になるような狭窄や閉塞が起こると足の血圧が腕よりも低下するという理屈です。

ABIが 0.9 未満の場合、これはPADを示唆する所見です。この段階で、PADの診断が確定します。

一方、ABIが 0.9 以上の場合は、PADの可能性は低いと考えられます。しかし、動脈硬化の進行の仕方では低値が出ないこともあり症状がある場合には、さらなる検査が必要となります。

例えば足首より先の血圧を測定するTBI検査や血流測定のためのSPP測定検査などがあります。また超音波検査、造影CT/MRI検査などの画像検査を行い、PADの有無や病変の程度を詳細に評価することになります。

このように、ABIの測定結果に応じて、PADの診断と病態評価のための適切な検査を選択していくことが重要です。
PADの早期発見と適切な治療介入により、予後の改善が期待できます。

それでは今からどのような症状がでるのか詳しく説明をしていきます。

どのような症状があるのか?重症度は?

先ほどご説明したように末梢の血管が狭くなった結果血流不足になったものを末梢動脈疾患(PAD)と言います。昔はASO(閉塞性動脈硬化症)と呼ばれていました。
血流不足によって起こる症状には重症度があり重症度と病態に応じて治療の方法や選択が変わってきます。

重症度はRutherford分類というもので分けられており7つのランクに分けられます。

Rutherford分類
0:無症状
1:軽度の運動負荷時痛
2:中等度の運動負荷時痛
3:重度の運動負荷時痛
4:じっとしていても痛い
5:足先の壊死・潰瘍
6:足首以上までおよぶ壊死・潰瘍

重症度の4以上をCLTIと言います。CLTIとは慢性的(2週間以上)に血流不足が続いており足の切断に至ってしまう可能性が高い状態と定義されています。

どのような状態であっても将来的に症状が進行した場合には、間歇性跛行や安静時疼痛、さらには潰瘍や壊死など、より重症な状態に至る可能性があります。
そのため、リスク因子の管理や生活習慣の改善などの治療を進めていく必要があります。

足の切断になってしまうのか?

一番あなたが懸念しているのは足の切断にならないかどうかだと思います。
先ほど言ったRutherford4以上つまりCLTIの状態になると切断リスクが高く積極的な血行再建(カテーテルや血管バイパス手術など)が必要とされています。
一方でRuhterford3以下では実はそこまで切断のリスクを心配する必要はありません。
5年でCLTIに移行するのは1~2%程度と言われており8割の方は症状の悪化も認めません。
まずあなたが足がじっとしていても痛くない、足に傷や色調変化がないのであれば安心してください。

では足の痛みが軽いあるいは無症状であればほったらかしで良いのかと安心されるのは少し違うのでこれから末梢動脈疾患患者さんの寿命についてお話を進めたいと思います。

CLTIってどんな状態?

ここではPADのなかでも重症化したものを画像で紹介します。

ほったらかしたらいけない末梢動脈疾患

先ほどまでのお話を読んで多くの方はCLTIではなく安心されたかもしれませんがそれは時期尚早です。

というのも末梢動脈疾患の患者さんは他の動脈硬化疾患をもっている割合が高く一般の人と比べて寿命が短いことが分かっています。多くの方が心臓血管疾患を発症し死亡してしまいます。

またCLTIの状態になると1年で4人に1人が亡くなってしまいます。つまりCLTIになる前の軽い動脈硬化の時点でそれ以上動脈硬化が進まないための治療を受けなければいけません。最近の報告では心臓血管疾患を持っている患者さんの家族は優位にうつ病が多い事が分かっています。
ご家族のためにも動脈硬化疾患の治療をしっかりと受けた方が良いことが分かると思います。

末梢動脈疾患を予防するために出来ることは?

末梢動脈疾患は血管が傷んだ一つのサインと言えます。つまりこのホームページに載っている動脈硬化のためのできる運動や食事をしっかりと行うことがまず大切です。その中でも特にPADに対してのエビデンスを含めて解説をしていきたいと思います。

運動療法

定期的な有酸素運動は、PADの進行を抑制し、歩行能力を改善する事が分かっています。具体的には週3回以上、30分以上の歩行運動が推奨されています。30分も歩行すると足が痛くて無理だという方は痛くなると少し休んでまた再開するというのを繰り返してください。痛みが出るくらいの運動を繰り返すことで足の血管が新しく生み出され足の血流が改善することが分かっています。

食事療法


地中海式食事療法は、PADリスクを30%低減させる事が分かっています。
具体的には以下のように分類できます。

脂質管理

  • 飽和脂肪酸の摂取を控える
  • オリーブオイルやナッツ類などのモノ不飽和脂肪酸を積極的に摂取する
  • オメガ3脂肪酸(EPA, DHA)を多く含む魚類を週2-3回摂取する

炭水化物の質の改善

  • 精製された炭水化物(白米、砂糖)の摂取を控える
  • 全粒穀物、豆類、野菜など、食物繊維の多い炭水化物を選ぶ

抗酸化物質の摂取

  • 野菜、果物、赤ワイン、緑茶などに含まれるポリフェノールを積極的に摂取する
  • これらの抗酸化物質は、血管機能の改善に寄与する

このように、脂質、炭水化物、抗酸化物質の質と量、さらに食事全体のバランスを改善することで、PADの予防効果が期待できます。

禁煙

喫煙はPADリスクを2-3倍増加させます。逆に言うと禁煙により、リスクは半減する事が報告されておりきわめて効果が高いです。現在は禁煙外来で禁煙補助薬を保険適応でもらうことができるので是非禁煙を達成してください。

薬物療法


薬物療法は基本的に動脈硬化の進展を抑えるために高血圧や糖尿病それぞれの疾患を患者さんごとに調整します。ここでは特にPADに特化したエビデンスのご紹介をします。

スタチン

スタチンは、LDL-コレステロール値の低下によりPADのリスクを低減させることが示されています。

HOPE-3試験:

  • 中等度のLDL-C上昇を有する患者を対象とした大規模無作為化試験
  • スタチン投与群では、LDL-Cが約30%低下
  • その結果、PADの発症リスクが約30%減少した

JUPITER試験:

  • LDL-C値が正常範囲の患者を対象
  • スタチン投与により、LDL-Cが約50%低下
  • PADの発症リスクが約30%減少

これらの研究から、LDL-Cを30-50%程度低下させることで、PADの発症リスクを有意に抑制できることが示されています。

具体的な目標としては、ガイドラインではLDL-C値を70 mg/dL未満に抑えることが推奨されています。

抗血小板剤

PADの患者さんにおいて、抗血小板薬は以下のような効果が期待されています。

症状の進行抑制
  • アスピリンなどの抗血小板薬の投与により、PADの症状進行を遅らせることができることが報告されています。
  • CAPRIE試験では、アスピリンがクロピドグレルと同等の効果を示した。
下肢切断リスクの低減
  • 抗血小板薬の投与により、PAD患者の下肢切断リスクが約30%低下する。
  • EUCLID試験では、ticagrelorがアスピリンに比べ、下肢切断リスクを有意に低減した。
心血管イベントの予防
  • PAD患者はACSなどの心血管イベントのリスクが高く抗血小板薬の使用により、心血管イベントの発症を抑制できる。

まとめ

今回はいかがでしたでしょうか。末梢動脈疾患は症状がないからや軽いからとおいておくと気づけば動脈硬化の成れの果てのようになってしまいます。

なってしまった方もこれ以上動脈硬化が進行しないためにできることをやりましょう。

引用文献

  1. CLEVER study. Hiatt WR, Regensteiner JG, Hargarten ME, et al. Benefit of exercise conditioning for patients with peripheral arterial disease. Circulation. 1990;81(2):602-609.
  2. PREDIMED study. Ros E, Martínez-González MA, Estruch R, et al. Mediterranean diet and cardiovascular health: Teachings of the PREDIMED study. Adv Nutr. 2014;5(3):330S-336S.
  3. HOPE-3 study. Yusuf S, Bosch J, Dagenais G, et al. Cholesterol Lowering in Intermediate-Risk Persons without Cardiovascular Disease. N Engl J Med. 2016;374(21):2021-2031.
  4. JUPITER trial. Ridker PM, Danielson E, Fonseca FA, et al. Rosuvastatin to prevent vascular events in men and women with elevated C-reactive protein. N Engl J Med. 2008;359(21):2195-2207.
  5. CAPRIE trial. CAPRIE Steering Committee. A randomised, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischaemic events (CAPRIE). Lancet. 1996;348(9038):1329-1339.

6.EUCLID trial. Hiatt WR, Fowkes FG, Heizer G, et al. Ticagrelor versus Clopidogrel in Symptomatic Peripheral Artery Disease. N Engl J Med. 2017;376(1):32-40.
7.日本循環器学会末梢動脈疾患ガイドライン

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