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健康診断で生活習慣病を指摘されたあなたが最初に読むべき動脈硬化の基礎知識

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はじめに

昔は全て判定がAだったのに気づけば年齢があがり健康診断でひっかかるようになった・・・

中々平日時間が取れず病院に行けていない。

今困っていないから、まぁいいやとほったらかしにしていませんか?

ご存じのとおり高血圧や高脂血症など生活習慣病を症状がないからとほっておくと動脈硬化が進行しやすくなります。動脈硬化は高血圧など生活習慣病の根本原因で、重大な合併症を引き起こす危険があります。

しかし、動脈硬化に対する正しい知識を持ち、生活習慣を改善することで、予防や進行抑制が可能です。ここでは、動脈硬化の基礎から自分の状態を知る方法、予防法までを循環器専門医である院長がわかりやすく解説します。

この記事を書いている人

しぎょう循環器内科・内科・皮膚科・アレルギー科 院長 執行秀彌           

【資格】

日本循環器学会専門医

日本内科学会 総合内科専門医 指導医  

日本心臓リハビリテーション指導士

動脈硬化とはどんな病気?

動脈硬化とは、動脈の内壁が肥厚し硬くなる病態です。原因は加齢に加え、高脂血症、高血圧、糖尿病、喫煙などの生活習慣の乱れにあります。動脈が狭くなったり詰まったりすると、全身への血流が悪くなり、重大な合併症を引き起こします。  

動脈硬化が進行すると、主に以下の3つの病気を発症する危険があります。

  1. 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
  2. 脳血管障害(脳梗塞、脳出血)  
  3. 末梢動脈疾患

これらは命に係わる重篤な病気です。年齢があがればあがるだけそのリスクが高まるため、動脈硬化対策は避けて通れません。動脈硬化が引き起こす主な疾患について詳しく解説します。

虚血性心疾患

動脈硬化で冠動脈(心臓への血液供給路)が狭くなると、十分な血流が得られず、狭心症や心筋梗塞を発症します。狭心症は安静にしても胸痛が改善しない発作を起こし、重症化すると心筋梗塞になります。心筋梗塞は冠動脈が詰まり心筋が壊死する命に関わる病気です。

脳血管障害 

脳への血液供給路が動脈硬化で狭くなると脳梗塞を、動脈が破れると脳出血を引き起こします。脳梗塞は脳組織が壊死し、麻痺や構音障害などの後遺症が残ります。脳出血は出血により意識障害や片麻痺といった重篤な症状が出ます。

末梢動脈疾患

下肢の動脈が狭窄すると、足への血流不全から間欠性跛行(歩行時の痛み)や潰瘍ができます。重症化すると足の組織が壊死し、最悪下肢切断を余儀なくされる恐れがあります。

このように動脈硬化は、命に関わる重篤な合併症のリスクを高めます。年齢とともに避けられない課題ですので、早期の予防対策が何より大切です。

自分の動脈硬化状態はどう知る?

健診で異常値が出たら、次はどの検査を受ければ動脈硬化の進行具合が分かるのでしょうか。  

■身体所見

なかなか動脈硬化の状態を病院に行かずに把握するのは難しいのが実際です。しかし病院に行かなくてももしあなたにこのような状態があれば動脈硬化が進行している可能性があります。

1)耳たぶのしわ(ear lobe crease)

耳たぶに切れ込みがあると、無症状でも血管が傷んでいるサインです。動脈硬化の初期徴候として知られています。  

2)足の毛が薄い

これは本来毛深い男性で片方の足だけ毛が薄いと、その足の血管が狭くなっている可能性があります。  

3)爪が割れやすい

爪への血流不全から爪が割れやすくなります。動脈硬化の進行を示唆する所見の一つです。

4)皮膚が粗く乾燥している  

皮膚への血流不足から、皮膚がカサカサして粗くなり、乾燥しがちになります。特に下半身に顕著に現れます。

このような身体の変化に気づいたら、一度専門医に相談するといいでしょう。

■血圧測定  

高血圧は動脈硬化の主な原因の一つです。家庭でも定期的に測り、管理が重要です。

ここまでは自宅でできる動脈硬化の進行のチェックです。医療機関を受診すれば、さらに詳しい検査を受けられます。

■ABI(Ankle-Brachial Index)検査

足と腕の血圧比から下肢動脈の狭窄を調べます。0.9以下であれば動脈硬化が進行している可能性があります。

■頚動脈エコー検査  

頚動脈の動脈硬化の進行度を直接画像で観察できます。プラーク(動脈硬化巣)の有無や程度が分かります。

■CT検査/MRI検査

動脈の状態を詳しく立体画像で調べられます。高度な器質的変化があれば動脈硬化が進んでいる証拠です。

このように、血液検査と各種画像検査を組み合わせて総合的に評価することで、自分の動脈硬化の具体的な進行状況が把握できます。

動脈硬化を防ぐ生活習慣とは?

■食事

動脈硬化を予防する食事は、野菜、果物、魚を中心とした食事が基本です。

【推奨食品】

  • 野菜(緑黄色野菜、しそ科野菜など)…食物繊維が豊富で便秘予防にも
  • 果物…ビタミンC、カリウムなどの抗酸化物質が豊富
  • 魚介類…EPAやDHAなどの良質な油が含まれる
  • きのこ類…食物繊維が豊富で抗酸化作用もある
  • 大豆製品…食物繊維、たんぱく質、イソフラボンが含まれる
  • オリーブオイル…良質な油で抗酸化作用がある

【控えめにしたい食品】

  • 動物性脂肪(バター、ラード、チーズ、レバーなど)
  • 塩分の多い食品(加工食品、インスタント食品など)
  • 精製された砂糖や小麦粉の多い食品

【おすすめレシピ】

・小松菜と桜エビの白和え

・さわらの香り蒸し

・なすの揚げ浸し

・ひじきの生野菜サラダ

など、旬の食材を上手に取り入れた料理がおすすめです。

■運動

有酸素運動が、動脈硬化予防に最も効果的です。無理なく続けられるものを見つけましょう。  

【おすすめの有酸素運動】

  • 歩く(散歩、ウォーキング)…環境に合わせてペースを調整する
  • 水運動(水泳、水中ウォーキング)…無理なく全身運動できる
  • サイクリング(自転車)…強度調整が容易
  • ランニング(ジョギング)…体力に合わせてペースを落とす
  • ダンス、エアロビクス…リズム運動で楽しく続けられる  

【実践方法】

・週2~3回、1回30分以上行う

・運動前後には軽いストレッチをする

・暑さ寒さに注意し、こまめに水分を補給する

・無理のない範囲で、徐々に運動時間や強度を増やす

規則的に有酸素運動を続けることで、血管の老化が遅れ、動脈硬化が予防できます。

■禁煙

喫煙は動脈硬化の最大の危険因子です。一刻も早く禁煙することが何より重要です。禁煙外来の支援を受けたり、禁煙補助薬を使用するのも有効な方法です。

■適度な飲酒

飲酒は控えめが理想的です。過度の飲酒は動脈硬化のリスクを高めてしまいます。1日あたりのアルコール摂取量は、ビール350ml、日本酒180ml、ウイスキーシングル1杯(60ml)を目安に抑えましょう。

■休養・ストレス管理

睡眠は1日6~8時間を目安に十分な睡眠を心がけましょう。ストレス解消は、趣味、温泉、旅行なども有効な手段です。気分転換を図り、ストレスをためこまないことが大切です。

■薬物治療

高血圧症、高脂血症、糖尿病などがある場合は、きちんと治療薬を服用することが欠かせません。

このように、生活習慣を総合的に見直し、動脈硬化に配慮した生活リズムを作ることが、予防につながります。継続が何より大切です。  

合併症を知っておく

動脈硬化が進行すると、以下のような重大な合併症を引き起こす危険があります。

■虚血性心疾患

動脈硬化で冠動脈が狭くなると、十分な血流が得られず、狭心症や心筋梗塞を発症します。

狭心症は胸痛が特徴的で、安静にしても改善しません。重症化すると心筋梗塞になり、命に関わります。

治療は、狭くなった冠動脈にカテーテル治療やバイパス手術を行います。重症例では開心術が必要になることもあります。  

■脳血管障害

脳への血液供給路が狭くなると脳梗塞を、動脈が破れると脳出血を引き起こします。

脳梗塞は脳組織が壊死し、麻痺や構音障害などの後遺症が残ります。

脳出血は出血により意識障害や片麻痺といった重篤な症状が出ます。

いずれも後遺症が残りやすく、リハビリが必要となることが多くあります。

■末梢動脈疾患

下肢の動脈が狭くなると、足への血流不全から以下のような症状が現れます。

・間欠性跛行(歩行時の肉体的疲労と痛み)

・潰瘍(足げり部の潰瘍ができる)

・足の冷え、しびれ

重症化すると、最悪の場合、壊疽(足の組織が壊死)となり、下肢切断を余儀なくされる恐れがあります。

■腎不全

腎臓の細かい血管が動脈硬化で詰まると、徐々に腎機能が損なわれていきます。

重症化すると終末期腎不全に陥り、透析治療が必要になります。

腎不全では、全身倦怠感、食欲低下、むくみ、呼吸困難などの症状が現れます。

動脈硬化が原因の場合は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を伴うことが多くあります。

■失明

眼球内の細かい血管が動脈硬化で閉塞すると、網膜や視神経への血流不全から視力障害や失明に至ります。代表的な病気として糖尿病性網膜症があげられます。  

動脈硬化が進行すると、まず視野の狭窄や暗点などの初期症状が現れ、次第に視力が低下していきます。重症化すると失明に至る危険もあり、早期発見と治療が重要です。

このように、動脈硬化は全身の細かい血管を徐々に詰まらせ、様々な重篤な合併症を引き起こします。心臓、脳、末梢動脈に加え、腎臓や眼球の血管障害にも注意が必要です。

一度発症すると、透析療法や失明などの後遺症が残る可能性もあり、予防対策が何より大切といえるでしょう。

適切な治療で予防可能に

虚血性心疾患、脳血管障害、末梢動脈疾患は、動脈硬化が原因で引き起こされますが、適切な生活習慣の改善と治療を行えば、かなりの確率で発症を防げるということが分かっています。

■虚血性心疾患

ランセット誌に掲載された大規模な無作為化比較試験では、心血管疾患の高リスク患者に対し、食事療法、運動療法、体重コントロール、禁煙を組み合わせた包括的な生活習慣改善プログラムを行ったところ、6年後の心血管イベントの発生率が対照群の52%に抑えられたと報告されています。

■脳血管障害

日本人を対象とした大規模な前向き研究(JACC Study)の結果によると、食事、運動、喫煙、飲酒などの生活習慣が良好な場合、脳卒中の発症リスクは不良な場合に比べて70%以上も低くなると示されています。

■末梢動脈疾患

欧州心血管病予防ガイドラインによると、末梢動脈疾患の発症リスクは禁煙で約50%、適正体重の維持と規則的な運動習慣によっても大幅に低下することが明らかにされています。  

このように、生活習慣の改善に加えて、必要に応じて適切な薬物療法を行うことで、動脈硬化による主要な合併症を高確率で予防できる可能性が示されています。

具体的には、高血圧症や糖尿病、高脂血症に対する治療薬の服用、抗血小板薬の使用などが重要です。ただし、医師の診断と処方に基づいた適正な使用が前提となります。

動脈硬化は長期に渡る生活習慣の積み重ねが原因ですが、その一方で生活習慣の改善と治療によって、合併症の発症をかなりの確率で予防できることが分かります。健康診断で引っかかるという事は動脈硬化が進行しているサインの可能性が高いので、年齢があがって動脈硬化が気になる方は、早めに対策を講じることが重要といえるでしょう。

包括的な生活習慣改善の大切さ

これらの研究結果が示すように、単に一つの生活習慣を改善するだけでなく、食事、運動、喫煙、飲酒など、生活習慣全般を包括的に改善することが肝心です。

特に食事と運動は大きな役割を果たします。バランスの良い食事と規則的な有酸素運動を続けることで、動脈硬化の進行を効果的に抑制できます。

また、禁煙や適度な飲酒、ストレス管理なども重要不可欠な要素です。喫煙は動脈硬化の最大の危険因子ですから、一刻も早く禁煙に取り組む必要があります。

さらに、生活習慣改善に加えて、高血圧、糖尿病、高脂血症などに対する薬物治療を適切に行うことも欠かせません。

つまり、あらゆる側面からトータルでアプローチすることが、動脈硬化の予防と重症化抑制につながるのです。習慣は一朝一夕には変えられませんが、少しずつでも前向きな行動を積み重ねていけば、いつかは理想の生活習慣が身に付くはずです。

まとめ

年齢があがると動脈硬化が進行しやすくなりますが、適切な予防法を実践することで、その進行を抑え、重大な合併症のリスクを下げられることが分かりました。

動脈硬化の主な予防法は、食事、運動、禁煙、適度な飲酒、休養・ストレス管理、そして必要に応じた薬物療法です。これらを総合的かつ継続的に実行することが何よりも重要です。

一方で、早期に動脈硬化の進行状況を把握し、適切な治療を行うことも合併症予防には欠かせません。血液検査や画像検査などで自分の状態を知り、専門医の指導の下、生活習慣改善と並行して治療を受けることが推奨されます。

なぜなら、複数の信頼できる研究結果が示すように、生活習慣の改善と適切な治療を組み合わせれば、動脈硬化による虚血性心疾患、脳血管障害、末梢動脈疾患などの発症をかなり高い確率で予防できるからです。

健診で異常が見つかれば、積極的に専門医の診察を受け、検査で自身の状態を把握しましょう。そして医師の指導の下、生活習慣の改善と並行して適切な治療を受けることで、活力ある毎日を過ごせるようになるでしょう。  

動脈硬化は長年の生活習慣の積み重ねが原因ですが、その一方で、生活習慣の改善と治療によってかなりの確率で予防が可能であることが、科学的根拠から明らかになっています。健康で素晴らしい60代後半を過ごすため、今こそ動脈硬化対策に本気で取り組む絶好の機会なのです。

早めの対策を心がけ、生活の質を下げることなく、健やかで活力に満ちた毎日を送りましょう。

以上

引用文献

(Lancet 2013; 381:1629–39

(Circulation 2011; 123:963–972

(Eur Heart J 2016; 37:2315–2381

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