こんにちは、循環器専門医の執行です。
健診の結果がかえってきたら、Brugada型ST上昇になっていた。調べたら突然死がどうとかと書いている。
「私は突然死するんですか?」と不安に思われていませんか?
まず言っておきたいのがBrugada型ST上昇≠Brugada症候群(突然死リスクが高い症候群)ということです。
Brugada型ST上昇は日本人で、男性で2.2%、女性では0.2%に見られると言われており。日本人男性の47人に1人に認められます(男子校のクラスに1人くらい)。そんなにどんどん突然死するわけではないのでまず焦らないでほしいです。
そもそもBrugada症候群ってなに?
うえのような特徴的な心電図異常がある方が突然致死性不整脈(心室細動)を起こして突然死することがある報告がBrugada兄弟によって報告されたのが始まりです。元々日本でポックリ病と言われていた原因の一つと考えられています。
心電図にはCoved型とsaddleback型がありますが詳しく波形の特徴を知る必要はありません。
実際はどちらの心電図であっても無症状であれば突然死率は低いのが現実です。
Brugada心電図、突然死のリスクはどれくらいあるの?
大切な事はあなたが突然死するリスクが高いかどうかですよね。
同じ数字をみても高いか低いかは人によると思うので、比較基準として一般人で突然死の発生率を示しますが 0.1~0.2%と言われています。
それと比較してBrugada心電図は無症状であれば0~0.6%と報告されています。
ですので大差はなく心電図だけでは判断がつきません。
ではどういう方がリスクが高いのか?
まずBrugada症候群かどうかです。先ほどBrugada症候群≠Brugada心電図と言いましたが、Brugada症候群と診断する大前提はBrugada心電図でCoved型であることが必須となっています。
ではBrugada心電図(saddleback型)はほっといてよいの?と思われると思います。実は薬を使ってCoved型に変わる方や日によって変わる方がいますのでそれをチェックします。
Coved型だったとしても無症状であればリスクは高くありませんので気を落とさないでください。
では症状とは何?ですが
- 入眠中に息苦しそうな呼吸をしている
- 失神をしたことがある
- 意識を失ってけいれんしたことがある
そういった方は突然死のリスクが高いのでICDというペースメーカーのような機械を植え込んだりする必要が有るかもしれません。
すぐに受診してください。
なお症状は他にもあるのですが、確実に入院している(もしくはもう死亡している)ので記載していません。
では無症状なあなたはほっといてよいでしょうか?ということですが、心電図でCoved型の方はリスク評価のために大きい病院でやる検査が必要なので大きい病院にいきましょう。
大きい病院の選び方、循環器内科がある病院であることは勿論ですがそこに不整脈グループという不整脈に特化したグループがある所をおススメします。
ではSaddleback型の方は、一度Coved型になるかどうかを調べるためお近くの循環器内科に受診をしてください。
Brugada症候群の遺伝子検査はあるがまだまだ発展途上
Brugada症候群のリスク因子の一つとして遺伝子異常が報告されています。2020年11月時点で13種類の遺伝子異常が報告されていますが、一番変異の頻度が多いSCN5Aの変異でもBrugada症候群の10~30%程度にしか当てはまりません。
そして心停止(突然死)のリスクを測る感度は32%、特異度は57%とそこまで精度が高くないことが分かっています。そのため2021年現在はまだ保険適応となっていません。
国立循環器病研究センターでは自費診療で遺伝子異常の同定を行っていますがその価格は45400円と高額であり費用と効果のバランスはまだ取れているとは現時点では言えません。
まとめ
Brugada心電図だけで無症状であれば突然死リスクは一般人とそんなに変わらない。
しかしBrugada心電図の中に高リスク患者がいるのも事実なので一度検査は必要。Coved型を指摘されていれば不整脈グループのある大病院に受診を。saddleback型であれば循環器内科を受診を。
Saddleback型であってもCoved型になったりすることもあり経過観察は必要なので定期的に心電図はとろう。
以上
参考文献
Brugada P et al;J Am Coll Cardiol 1992;20:1391–6.
Guidelines for Diagnosis and Management of Inherited Arrhythmias(JCS 2017)
Priori S et al; Eur Heart J 2015;36:2757–9.
日職災医誌,62:57─64,2014
この記事を書いた医師
Dr. 執行 秀彌(しぎょうひでや)
しぎょう循環器内科・内科・皮膚科・アレルギー科 院長
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
大阪市立大学医学部を卒業後
国立循環器病研究センター病院や住友病院等を経て2020年4月に開業
最寄駅:JR立花駅(徒歩20分)および尼崎センタープール前駅(徒歩10分)